忘れちゃいけないこと~恩

エッセイ

恩を忘れるのは人間と虫だけ。
そんな一文を昔どこかで目にした事があります。

もう5年ほど前か、もしくはもっと前になるでしょうか。
ちょっといろいろあって実家の家族と一切連絡を取らなくなった時期がありました。
原因はまあ完全に自分なんですが、
少し難しい問題といいますか、とにかくあの時は取れませんでした。
期間で言うとどれくらい連絡を取っていなかっただろう。

自分の住んでいるところは実家から自転車で5分ほどのところなので、
例えば家にご飯を食べに行ったりなんて事を普通にやっていた感じだったのですが、
半年か、もしくは1年か、もっとだったか。
実家から携帯に連絡があっても、返事をしていなかったと思います。

そんな時、当時家に居てくれていた家族のミニチュアダックス、おとさんが
危篤で危ないという連絡が来ました。
そこからの記憶は強いのですが、寧ろ連絡を取らなくなったキッカケの日からその日までの
間の日々の記憶があまり無いのです。

とにかくその頃から再び実家に行き来するようになりました。
おとさんはだいぶ歳ということもあって、
口の上の辺りに癌が出来ていました。
一時は本当に危なく覚悟しなければならなかったのですが、
何度もおとさんに会いに行き、ぼくはそのお陰だと思っているのですが
結果何とか危篤状態から抜け出してくれたのです。

結局そこから1年くらい、おとさんは頑張ってくれたでしょうか。
最終的に7月、ぼくたち家族は安楽死という非常に苦しく難しい決断をする事になりました。

ただまあ最近になって、当時のことをふと思い出した時に、
あぁ、おとさんはぼくと家族をもう一度引き合わせてくれたな、と思ったんです。
おとさんが危篤と聞いて、実家に駆けつけたんです。
そのキッカケが無ければどうしていたかは見当もつきません。

ちなみにその年、自分がベトナムへ行っている間におじいちゃんが亡くなっていました。
ベトナムへ行く前に一度家族でお見舞いに行っているのですが、
その年で親の涙を見たのは、おとさんの時で2度目でした。
ぼくが起こした問題は涙こそ出すような類では無かったはずですが、
しかしかなり難しい問題だったはずです。
その時の両親はどんな気持ちだったのでしょう。

もうそんな思いをさせるなんて、出来るはずがありません。
おとすけさんの命、そして無条件の愛情を注いでくれる家族へ。
恩、償い、礼、感謝・・・
生ぬるいことを言っている時間はないです、返していかないと。

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